はじめに
データ活用なうでは、より皆さまのデータ利活用に寄与するために、さまざまな専門家の方にその知見を伺い、発信してまいります。
バス停情報研究家の佐野一昭(さの・かずあき)さんに、今回より毎月1回「バス路線図データから紐解くバスの乗車方法」をテーマに執筆いただきます。
令和元年はMaaS(Mobility as a Service)元年ともいわれ、今後ますます交通がITの力やデータの力を借りてシームレスになっていくといわれています。そうした中で、日本とアメリカの間、利用者と事業者の間など、いわばデータ活用の交差点に立つ佐野さんから、交通とデータのかかわりについて、ご自身の体験を交えてご紹介いただきます。佐野さん撮影の各地のバス写真と合わせて、ぜひご覧下さい。
バスの乗り方は意外と複雑?
皆さんはバスに乗られますか?
乗る機会の少ない方など、バスにどう乗ればよいのかわからないとお感じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
バスに乗るには、いくつかの異なる能力を合わせて使うことが必要です。主なものとして、
・路線図などから位置的なことを把握する
・時刻表などから時間的なことを把握する
・運賃表などから金額的なことを把握する
があります。しかもこれらを関連連ける必要もありますから、なかなか難しいことでしょう。
ところで、生活していれば様々なことをしなければなりません。実はバスに乗ることより難しい、あるいは複雑なことをいくつもされているのではないかと思います。
たとえば料理することなども食材を買うところから加工、調理して美味しい料理が食べられるまでには多様な知識や技術が必要です。きっと最初の頃はできなかったことでも、繰り返すことでだんだん上達して今があるのではないでしょうか。
不慣れな難しいことを一回で処理しようとすると大変ですが、何度もの繰り返しの中で、いくつもの小さな単純な部分を理解していくことで、少しずつできるようになっていくのだと思います。
これはなかなか大変そうにも思えますが、いっぽうで急がば回れということなのかもしれません。
私は子供の頃からバスが好きで、見たり乗ったりしてきました。
今ではバスに乗ることに抵抗を感じることは殆どなく、アメリカでも何度も苦労することなく現地のバスに乗ることができました。これは、何年もかけて、いろいろな地域のそれぞれに個性が異なる数多くのバスに乗る体験を重ねてきたことが大きな助けになっているように感じています。
これまでのたくさんの経験の中には、失敗もいくつもしています。しかし「失敗は成功の基」と言うように、それがきっかけで気づけたり改善できたりしたこともあるように思っています。
さて、これまでバスに乗る機会がそれほど多くなかった方に、同じようにたくさんの経験をしましょうというのもなかなか難しいので、ここではこれまでの私の経験なども参考にしながら、バスに乗るために必要なことについて回を重ねながら、少しずつ説明していくことにしましょう。
自分の好みにあった乗り方をするために
最近は乗換検索アプリなどで目的地さえ指定すれば、初めての場所でも迷うことなく現地へ行くことも可能になってきました。
こういったものも、どんどん活用してバスの利用機会を増やすことも良いことだと思います。
そして、乗換検索アプリが使えるのだから、路線図や時刻表など読めなくても構わないというご意見の方もいらっしゃると思います。
もちろんそれを否定するつもりはありませんが、乗換検索アプリなどを使うことは、食べることで言えばファーストフードやインスタント食品を食べるような感じだと思います。
そして、路線図や時刻表などを駆使しながらバスに乗ることは、自分で食材を買ってきてレシピを見ながら、ときには自分なりのアレンジを加えながら調理した料理を食べることに似ていると言えるでしょう。
つまり、乗換検索アプリによって、バスに乗る機会や選択肢を増えたわけですが、いっぽうで、自分で路線図や時刻表で調べながらであれば、より自分の好みにあった乗り方ができるようになると思います。
のんびり、ぶらぶら散歩する感覚でバスに乗ることは普段気づいていない街の姿を知ったりできますし、突発的な災害などのトラブル発生時に臨機応変な移動ができる助けになったりするかもしれません。
さて、バスに乗るための簡単な流れは、路線図でバスがどこに走っているのかを見つけて、時刻表でそのバスがいつ来るのか、そして運賃表などでいくらかかるのかを調べます。そして、バス停からバス停に乗って目的地へ向かいます。
次回から路線図や時刻表の見方などからスタートして、バスの乗り方を説明していこうと思います。
執筆者情報
佐野 一昭(さの・かずあき)
バス停情報研究家。
1968年生まれ、広島県出身。幼少期からバスが大好きで20代で全国各地のバスを見てまわり47都道府県訪問。最近はアメリカのバスにも興味が出てきて毎年渡米、20を超える都市でバスの使い勝手を体験している。まったく異業種の企業に就職したが、バス情報をうまく利用者に伝えたい思いで2014年に独立。現在は、利用者とバスの接点であるバス停位置情報を現地調査し、それを企業などに提供している。
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