バス路線図データから紐解くバスの乗車方法 #002 バス路線図の見方

交通

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バス停情報研究家の佐野一昭(さの・かずあき)さんに、毎月1回「バス路線図データから紐解くバスの乗車方法」をテーマに執筆いただきます。

令和元年はMaaS(Mobility as a Service)元年ともいわれ、今後ますます交通がITの力やデータの力を借りてシームレスになっていくといわれています。そうした中で、日本とアメリカの間、利用者と事業者の間など、いわばデータ活用の交差点に立つ佐野さんから、交通とデータのかかわりについて、ご自身の体験を交えてご紹介いただきます。佐野さん撮影の各地のバス写真と合わせて、ぜひご覧下さい。

バス路線図

どんなことでもそうですが、下調べや練習などの事前準備ができているとスムーズに進められます。バスに乗る場合もそれは同じですから、その方法などについて説明していきます。

バス路線図の入手

バスに乗るためには、まずバスがどこに走っているのかを知る必要があり、それにはバス路線図を使います。

そのため、最初にバス路線図を入手する必要がありますが、バス路線図は一般的にはそのバス路線を運行しているバス事業者(バス会社)が発行しています。また、最近ではその地域の自治体が発行している場合もあります。

いずれにしても、バスに乗る地域でバスを運行している事業者を最初に把握しておくと、その後の流れが楽になります。

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神奈川県川崎市宮前区(筆者提供、https://bus-in-scene.blogspot.com/2020/01/0101.html)

バス事業者を調べる方法は実は簡単ではない場合もあり、最初のハードルになるかもしれませんが、一般的に以下の方法があります。

・地元など土地勘があり、すでにバス事業者を把握できている
・近所のバス停に行き、そこに表示されているバス事業者名を確認する
・その自治体のウェブサイト内で公共交通を案内している情報を探す
・観光地などであれば、その地域のガイドブックに情報を探す
・書店で売られている鉄道時刻表(大判)の巻末の地方交通案内で該当地域を探す
・乗換検索アプリなどの検索結果を参考にする
・「地域名 バス」などでウェブ検索してみる
・都道府県ごとにあるバス協会のウェブサイト内を探す

必ずしもどれかひとつで知りたいバス事業者がわかるとは限りませんが、いくつか組み合わせることで該当するバス事業者を見つけることができます。

なお、ウェブ検索では古い情報が含まれている場合がありますので、その情報の日付を確認したり、他の方法で調べた内容と比較したりするなど、その情報だけを鵜呑みにしないほうが安全です。

静岡県三島市(筆者提供、https://bus-in-scene.blogspot.com/2020/01/0101.html)

バス路線図は、従来は紙に印刷されたものが主流でしたが、最近はPDFなどのデータ提供も増えてきました。まずは、目的のバス事業者のウェブサイトを探し、そこでバス路線図が提供されているか確認してみましょう。

紙の路線図はバス案内所や営業所などで配布されています。バス事業者のウェブサイトで案内所や営業所の所在地を調べ、近所にあれば都合の良いときに立ち寄って入手しておくとよいでしょう。旅行先で乗るなど遠方の場合は、その地域のバス事業者に電話するなどすれば路線図などを郵送してもらえる場合もありますので確かめてみましょう。

バス路線図の種類

バス路線図は、見た目の違いで大きくふたつあります。

ひとつは縦横の単純な線で描かれた路線図です。そして、もうひとつは地図をベースにした路線図です。以前は前者が多かったですが、最近は後者が増えつつあるようです。

東京都交通局 https://www.kotsu.metro.tokyo.jp/bus/areamap/pdf/syanai_nerima_l.pdf

縦横の線で描かれた模式的な路線図は、地図的な情報が少ないですが、いっぽうでそれぞれのバス路線の関係が整理されており、地名や位置関係を知っているなど、ある程度の土地勘があればわかりやすい場合もあります。

東京都交通局 https://www.kotsu.metro.tokyo.jp/bus/map/pdf/2020allmap_high.pdf

地図ベースの路線図は、位置関係や距離感を把握するのに適しており、川や公園、主要施設など地形や目的地となる場所も描かれていることもあり、地図を見慣れた方には理解しやすいでしょう。

最近では、路線図はバス事業者のウェブサイトなどで見ることが可能な場合が増えてきており、PDF版などダウンロードに適したものが提供されていることも多くあります。しかし、バス路線の範囲が広い場合などは路線図が大きくなってしまうため、スマートフォンの画面で見るのが難しいこともあります。

バス事業者では紙に印刷した路線図の配布をしているところも多く、バス案内所や営業所などで入手できます。紙の路線図は、目的地などをメモすることが可能などの利点があり、うまくスマートフォンと紙の路線図を使い分けるといいでしょう。

バス路線図の見方

バス路線図を見る場合、まず現在地などのバスに乗る場所と、目的地であるバスを降りる場所を確認しましょう。

次に乗る場所、降りる場所を通るバス路線を探します。バス路線は色分けして描かれていることが多いので、線の色をたどっていくことで、それぞれのバス路線がどこを結び、どう走るのかがわかります。

うまく乗る場所と降りる場所をつなぐ路線が見つかれば、それに乗ることが可能なのか時刻表を調べましょう。路線によっては本数が少なかったり、朝夕などの限定された時間帯しか走らない場合もあり、必ずしも都合が良いとは限らないからです。なお、時刻表の見方については次回詳しく説明します。

それでは実例で説明しましょう。例えば渋谷駅から六本木駅まで移動する場合、バス路線図を見ると水色の太線が「渋谷駅」と「六本木駅」の両方を結んでいるのがわかります。そして線の横に同じ色で「都01(T01)」という文字が書かれていますが、これが路線名で時刻表など調べるときに使います(「T01」は漢字の読めない外国人向けに追加された路線名なので、ここでは「都01」を覚えておけばよいでしょう)。

東京都交通局 https://www.kotsu.metro.tokyo.jp/bus/map/pdf/2020allmap_high.pdf

なお、東京都交通局では線の太さでバスの運行頻度を表現しています。よく見ると渋谷駅から六本木駅までは茶色の「渋88」という路線でも行くことができますが、こちらは細線なので運行頻度が少なく、「都01」を使った方が良いという判断もできます。

線の太さや路線名の書き方などの情報は、バス路線図の端などにある凡例にその説明がありますので確認しましょう。

東京都交通局 https://www.kotsu.metro.tokyo.jp/bus/map/pdf/2020allmap_high.pdf

乗る場所と降りる場所をつなぐバス路線が見つからない場合、途中で乗り継ぐことが可能か調べてみましょう。バスを乗り継ぐ場合、待ち時間やバス停の位置など調べておくことが増えるので、すこし難易度は高くなります。

東急バス https://www.tokyubus.co.jp/route/routemap/pdf/00_all.pdf

例えば、品川駅から不動前駅入口まで直接行くバス路線はありませんが、品川駅から新馬場駅前まで「品94」(緑色)に乗り、新馬場駅前で「渋41」(青色)に乗り継げば不動前駅入口まで行くことが可能です。

このような場合、特に慣れないときは想定していないことが起きることもありますから、時間や心に余裕を持ち、代替策なども事前に調べておくと安心できると思います。

また、慣れないと難しく感じたり、失敗したりすることもあるかもしれませんから、乗る場所や降りる場所の範囲を少し広げて直接行くことができるバス路線を探してみるのも良いかもしれません。歩く距離が増えてしまいますが、途中で何か発見できるかもしれませんから、道中を楽しみながらという気持ちで歩いてみると良いでしょう。

最後に余談ですが、地図ベースの路線図は地図としても使えます。まち歩きが好きな方などは、カバンの中にバス路線図を入れておくと、歩くときに役に立つこともあります。

執筆者情報

佐野 一昭(さの・かずあき)
バス停情報研究家。

1968年生まれ、広島県出身。幼少期からバスが大好きで20代で全国各地のバスを見てまわり47都道府県訪問。最近はアメリカのバスにも興味が出てきて毎年渡米、20を超える都市でバスの使い勝手を体験している。まったく異業種の企業に就職したが、バス情報をうまく利用者に伝えたい思いで2014年に独立。現在は、利用者とバスの接点であるバス停位置情報を現地調査し、それを企業などに提供している。

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