列車に乗って旅するのが大好きなF-16ですが、夏の貧乏旅行の強い味方と言えば「青春18きっぷ」!
年に3回の行楽シーズンに発売される、「JR全線の普通列車・快速列車の普通車自由席が乗り放題」フリーパス5回分¥11500というおトクな切符です、例外なく毎年お世話になっています。
今季も昨日が使う最後のチャンス!腐らせては勿体ないので、普段出かけようとは考えないだろうなと思う、乗ったことのない路線に出かけてきました。
行った先は、JR烏山線。栃木県の宇都宮駅から東北本線を北に2駅目、宝積寺駅から東に分岐するわずか8駅のローカル線です。
単線、非電化なのでディーゼルカーが走っているのですが、運転頻度が1時間~1時間半に1本という、かなりの閑散路線です。ほとんどの列車が宇都宮駅から直通しています。宇都宮からたった9駅とは言え、途中の大金駅で上下線の列車行き違いを経て概ね1時間ぐらい掛かって、終点の烏山駅に到着します。
この烏山駅、実は今から30年ほど前に鉄道マニアだった人なら知らない人はいない、有名な駅なんです。
松本零司原作の「銀河鉄道999」が映画化された時、キャンペーンで当時の国鉄が、事前に行き先を公開しない「ミステリー列車」として999号を実際に運転した事があるのですが、その999号の終着駅に選ばれたのが、ここ烏山駅だったのです。
(ちなみに、そのミステリー列車で実際に使われた、劇場版銀河鉄道999の作中に登場するのと同じデザインの青いヘッドマークは、現在も大宮の鉄道博物館で展示されています。)
駅前広場の片隅に、昔懐かしの腕木式信号機が保存されていました。
全国的にも物珍しくなってしまった、クラシックな信号機ですが、実は首都圏でも3年ほど前まで、この前TORYさんが書いてました千葉県のJR久留里線で引退するまで、長年使われていたのです。
帰りの列車まで1時間ちょっと空いてしまったので、時間をつぶします。
せっかく遠くまで来たのですから、何かその地ならではのものを見聞きなり味わうなり体験なりしないと気が済まないのが、「旅鐡」の習性。
スマートフォンで検索したところ…おあつらえ向きの観光地が1つ見つかりました。
それが、島崎酒造さん。

清酒「東力士」という日本酒を作っている蔵元です。
通常は酒蔵の見学を予約制としているようですが、この日は一般開放でオープンカフェも実施しているとのこと。ちょうどいいチャンスと思い、駅前からタクシーで10分足らずのところにある酒蔵へ行ってきました。
(なお、写真の「本店」と酒蔵は別のところにあります。本店は駅から歩いて6~7分ぐらいのところにありますが、酒蔵は駅からタクシーで10分弱かかります。)
この島崎酒造さんが他の蔵元と一風変わったところは、日本酒の「長期熟成」に力を入れていること。
普通は日本酒の熟成は、仕込んだ後の大きな樽(木桶)なり、現代では金属の醸造タンクなりで行なうのが一般的なのですが、この島崎酒造さんは、通常の仕込みからタンクでの熟成を終えた後、小売り用に出荷するのと同じ瓶詰めした状態で何年も保存するという、まるでワインのような「瓶内熟成」を行なうことに注力しています。
そして、その長期熟成のために使っている酒蔵がスゴい!なんと、洞窟です。地元の観光マップにも「どうくつ酒蔵」として載っています。
その「どうくつ酒蔵」の生い立ちも凄い。実は元々、第二次世界大戦中に戦車の部品を作る工場として使うために掘られたとのこと!!小さな山の端から反対側まで3本の主坑と、それをつなぐように5本の横坑から成る総延長約600m・面積約720坪のトンネルが、戦時中の物資不足の中、人海戦術で手掘りして、しかもわずか1年の工期で掘られたとの事。ただ、このトンネルが実際に工場として使われることなく終戦を迎えたそうです。それでも、この洞窟は戦争の生き証人であることに変わりはありません。
外がよく晴れていて残暑厳しい中でも、洞窟の中は全く空調など無いにもかかわらずすごくひんやりとしていて、入り口の手前に立っているだけでも中から涼しい空気が流れてきて心地よいです。年間を通して内部の気温は10度台との事で、この日も内部は16度でした。この気候条件はまさにワインセラーとしてうってつけの条件ですから、その環境で日本酒の熟成を行なうというのも頷けます。
そのほか、イベント会場としても利用されていて、ちょうど前の日にコンサートが開かれたばかりだったそうで、日本酒を出荷する時のケースを積むパレットを重ねてステージが作られていました。
ガイド付きのコース見学となっていて、最後に試飲ができます。その年に作ったばかりの新酒や、最も長いもので24年物をちょっぴりづつ、無料で試飲させてくれました。ですので、車でないとなかなか行きづらい場所ではありますが、ぜひマイカーではなく列車とタクシーで訪れることを強くお勧めするところです。
オープンカフェのメニュー。
日本酒の仕込み水で淹れたコーヒーや、仕込み水からつくったかき氷が味わえます。
自家製の生姜シロップで作るジンジャーエールやかき氷もなかなか良いです。
自分はハイボールをいただきました。
どうくつ酒蔵で試飲した、長期熟成物や新年限定品もなかなか良かったのですが、本店で試飲した濁り酒が個人的にすごく好みに合って
いる感じがして、おいしかったです。
一度と言わず、もう一度訪れたくなる、なかなかの特色を持った蔵元さんでした。
●「どうくつ酒蔵」の場所はコチラ↓
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ではまた!