10/17(火) みんな引っかかる「ダミー兵器」ってご存じですか?

こんにちは!!「炎のタックラー マイク75」です!!

月日が経つのは早いもので、10月も中旬に差しかかってまいりました。
今年もあっという間に終わってしまいそうですね。

さて、皆さんは「ダミー兵器」ってご存じでしょうか?
そういわゆるハリボテで出来た戦車やトラックなどの偽物の兵器のことです。

今回のウクライナ侵攻でもロシアやウクライナの両軍が使用しているのが
確認されていたりします。

古くはギリシャ神話で木馬を作って人を潜ませ、それを敵陣内に運び込ませる
ことに成功した「トロイの木馬」など騙されるケースは非常に多い戦法です!

ちなみに今回のウクライナ南部の戦線で、2023年9月下旬にロシア軍の
第45独立偽装工兵連隊が再び戦場に姿を現したことが報じられています。

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↑膨らませて完成間近のバルーン製T-72(画像:Vitaly V. Kuzmin)

同連隊は「膨張式連隊」という異名を持ちます。
なぜなら、T-72戦車を戦場で瞬く間に増やすことができるのです・・・
とはいっても、その車両のほとんどは本物ではなく、空気を入れたバルーンで
作られたダミー戦車です。

③Screenshot_20231006-013211

↑ダミー用のM4「シャーマン」おそらくバルーンを使ったタイプと思われる(画像:アメリカ陸軍)

軍事用語では「デコイ」と呼ばれるこうしたダミー兵器は、本物と間違われる
ケースが多く、自動車などが登場する以前は人馬を、近代以降は車両を偽装し、
欺瞞(ぎまん)作戦がしばしば行われてきました。

かつて第二次世界大戦中の北アフリカ戦線では、こうしたダミー兵器が大量投入
されています。

砂漠などの乾燥地帯が舞台となった同戦線は、樹木などの遮蔽物に乏しく、航空
偵察されると丸見え状態でした。
これを逆手に取ったのが、ドイツ・アフリカ軍団を指揮していたエルヴィン・
ロンメル中将(当時)でした。

ロンメルは、自動車に板などを張り付けハリボテの戦車を作り、強力な戦車部隊が
いるように度々見せかけました。

先頭だけは本物の戦車を配備して、砂煙を出すことで、砂や空気のゆらぎなどで
視認を困難にさせる戦法でした。
他にも偽装した燃料集結所や、指令所に模した偽の家屋なども設置しました。

②Screenshot_20231006-013129

↑北アフリカ戦線で使われたトラックに板をかぶせたダミー戦車(画像:帝国戦争博物館)

これらの欺瞞作戦がどれほど効果を発揮したかは意見が分かれるところですが、
枢軸軍は戦車の保有数で劣勢の局面が多かったにも関わらず、戦闘を優位に進めて
いた期間が長かったのは事実です。

ドローン攻撃の増加でさらに必要に?
一方イギリス軍も同じく、ハリボテなどを用いた欺瞞作戦を同戦線で展開しました。

特に大規模だったものとして知られるのが、1942年10月から開始された「第2次エル・
アラメインの戦い」です。

このときイギリス軍のモントゴメリー大将は、枢軸軍を北側から攻撃することを
計画していましたが、南側から攻撃すると見せかけるために、北側に集めた戦車を
トラックに偽装。

対して南側にはハリボテ戦車のほかに、偽のパイプライン、偽の線路、偽の燃料や
水を貯蔵する施設を設置したほか、さらには偽の建築音まで出して偽装しました。

さらに、こうした方法は、1944年6月6日に実施されたノルマンディー上陸作戦の
偽装工作でも使われました。
イギリスはじめ連合軍は、大規模な戦車部隊や車両群をハリボテで作り、イギリス
南部へ展開、上陸目標はノルマンディーではなくパ・ド・カレーだとドイツ軍に
思い込ませたのです。

戦後、高性能なレンズやカメラなど光学機器が発展しても、一瞬でその目標が
本物か判断することは困難な場合が多く、1998年2月から翌年の6月まで行われた
コソボ紛争において、アメリカを中心としたNATO諸国の空爆に対してユーゴス
ラビア軍が、大量のダミー戦車を投入し対抗しました。

こうしたダミー兵器の目的は、わざと目立つところに置き、高価なミサイルや
爆弾を無駄に使わせるのが役目となっています。

今回のウクライナ侵攻でも、ロシア、ウクライナ両陣営がダミー兵器を用いて
います。

ロシアがT-72やS-300地対空ミサイルを模したバルーンでかく乱すれば、ウク
ライナ側も高機動ロケット砲システム(HIMARS)やM1「エイブラムス」を
模したバルーンで対抗するといった状態です。

ドローン技術の発展により自爆ドローンの攻撃が多くなっていますが、バルーン
戦車などはこの攻撃にかなり有効です。
熟練のオペレーターではないと、モニター越しの攻撃対象が本物かどうか判断
することは困難といわれ、むしろ現代においてダミー兵器が必要なケースは
過去よりも増えるという状態になっています。

しかもただのダミーではなく、バルーンの中でヒーターを入れることで、エンジンが
動いていると勘違いさせたり、発信専用の小型レーダー装置を用いて、本物のレーダー
装置が発するような信号を出して錯覚させるような装備も使われているケースもあり、
騙し合いも進化しているようです。

皆さんも興味があったら調べてみて下さい。

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